ハーレーのエアクリーナーを、ハイフロータイプに交換するにあたっては、気をつけたほうがいいというか、知っていたほうがいいことがある。
それは、「ブローバイガス」についてだ。
エアクリーナーの取り付けにあたっては、「ブローバイガス」の通貨経路となる「ブローバイライン」を塞いではならない。
また、取り付けは正しくても、定期的にメンテナンスをしてやらないと、ハーレーの年式や車種、取り付けるエアクリーナーの構造によっては、エアクリーナーからオイル漏れが発生する場合もある。
今回は、ハーレーのエアクリーナー交換時の注意点と「ブローバイガス」について。
ブローバルガスとブローバルライン
ブローバイガスとは?
まずは、「ブローバイガス」とはなんなのだろうか?
「ブローバイガス」とは、本来は、シリンダーとピストンの間からクランケース内へと漏れ出してくる未燃焼ガス(いわゆる生ガス)のことを指すが、一般的には、その他の水蒸気やオイルミストなども含めてブローバイガスと呼んでいる。
ウィキペディアによると、以下のように説明されている。
(「公道を走行する自動車や二輪車では」と、「二輪車」を追加させてもらった。)
ブローバイガスは、燃焼行程で高圧となった燃焼ガス(排気)や、未燃焼の混合気がピストンリング(コンプレッションリング)のシール能力を超えて、間隙からクランクケースに漏れ出したものである。
古くは、ブリーザーパイプを通じて、大気に解放されていたが、大気汚染の原因になることから、公道を走行する自動車や二輪車では、クランクケースを密閉式として、内部に溜まるブローバイガスを吸気管に還流させ、新しい吸気と混ぜて再び燃焼室に送る構造を採ることが法律で定められている。
日本工業規格 (JIS D0108) では「ブローバイガス」と定められている。
出典:Wikipedia(一部改)
ブローバイラインとは?
ハーレーだけでなく、国産の二輪車や自動車も、エンジンの内圧の上昇や低下を防ぐ為に、空気の通り道が設けられている。
それが「ブローバイライン」だ。
「ブローバイライン」を通る空気は、気化したガソリンなどの有害物質を含んでいる為、そのまま空気中に排出する事は法律で禁止されている。
その為、「ブローバイライン」から排出される「ブローバイガス」は、エンジンの燃焼室で燃焼させる必要がある。
ということは、ウィキペディアの「ブローバイガス」の説明の中にも書いてあった通りだ。
オイル漏れの原因
「ブローバイガス」には、ごく少量のオイルも含まれている。
オイルは、比較的重たいので、ハーレーのように吸気管が短く、横を向いていると、吸い込みきれずに、低い所に溜まってしまうことがあるという。
とくに、ハイフロータイプのエアクリーナーでは、吸気効率が良い反面、エアクリーナーエレメント内の負圧が弱まる為、重たいオイルは吸われにくくなってしまう。
社外のエアクリーナーでは、ブローバイガスを、吸気管ではなく、エアクリーナーエレメント内に排出する物も多くある。
そのような構造では、余計にエアクリーナーエレメント内に、オイルが溜まりやすく、時間が経つと漏れてくることがあるようだ。
しかし、それは異常な現象ではなく、定期的なメンテナンス(清掃)によって防ぐことができる。
⇒ アレンネスのエアクリーナーからオイルが漏れる前にメンテナンスをしよう!
エアクリーナー交換の注意点
上記のように、エアクリーナー交換をするにあたっては、「ブローバイガス」について知っていたほうがいい。
かりに、エアクリーナーの取り付けは問題なくできていても、気温上昇などにより、上手くエンジン内に吸い込まれなかった「ブローバイガス」に含まれるエンジンオイルが、エアフィルターに付着したり、エアクリーナーから漏れてきたりすることがあるからだ。
取り付けに問題がない場合であれば、定期的なメンテナンス(エアフィルターや受け皿を清掃すること)で、そのようなトラブルは避けることができるだろう。
問題は、取付不良やパーツ不良だ。
決して、「ブローバイライン」を塞ぐような取り付け方をしてはならない。
そして、通常は、あまりないとは思うのだが、そもそも「ブローバイガス」の通過経路が確保されていないなんてこともある。
つまり、パーツ自体に「ブローバイガス」の通過経路の穴が空いていない(もちろん、ヒドい不良品だ!)ものもある。
それを知らずに取り付けてしまうと、エンジン内に圧力がかかりすぎてしまい、どこかに逃げ道があれば、「ブローバイガス」はそこへ向かい、おそらく、そこから吹き出す。
そして、逃げ道がなければ、たぶん、エンジンが壊れるのだろう。
ということで、
ハイフロータイプのエアクリーナーに交換する場合は、「ブローバイガス」の通過経路は、しっかいりと確認した方がいい。
ベースプレートに穴がない!
素人の私が、なんで「ブローバイガス」のことなど知っているのかと言うと、私が頼んだ「ArlenNess(アレンネス)の INVERTED Bevelled」のベースプレートには、なんと、
「ブローバイガス」の通過経路となる、穴が空いていなかったのだ!
幸い、取り付けをお願いしていたショップの人が、そのことに気がついてくれた。
そこで、無理に取付はせずに、購入したディーラーへ、そのことを伝えて、エアクリーナーの交換を願い出た。
しかし、「不良品ではない」と言われ、結局、そのパーツを、ディーラーで取り付けることになった。
私も、「ブローバイガス」については、そこまで詳しくはなかったので、ディーラーで大丈夫だというのなら、大丈夫なのだろうと思った。
取付作業は、とくに難しいこともなく終わり、「ArlenNess(アレンネス)の INVERTED Bevelled」が取り付けられた愛車で、予定していたランチを食べに出発した。
オイルが吹き出した!
走り出して、しばらくして、恐ろしいことが起こった。
エアクリーナーからではないが、どこかから、エンジン付近から、かなりのオイルが吹き出していることに気がついたのだ。
フューエルタンク、マフラー、シートに、履いていた靴やパンツまで、オイルまみれになった。
オイルランプが点灯していたので、どうやら、エンジンオイルが吹き出していたようだったが、ディーラーに電話すると、自走できるようなら、自走してディーラーまで戻ってきて欲しいということだった。
あまり走らせたくはなかったが、しかたなく、恐る恐るディーラーまで戻った。
やはり、ベースプレートの穴(「ブローバイガス」の通貨経路)は、必要なのだ。
ボルト(ブリーザーボルト)には、しっかりと穴が空いていたので、ベースプレートに穴がなくては意味がないことは、素人にも分かる。
「ブローバイガス」の通貨経路を塞いでしまったことによって、エンジンのクランクケース内の空気の逃げ場が失われ、それが、いちばん弱い部分から、エンジンオイルと一緒に吹き出したのだろう。
おわりに
オイルまみれの愛車を、ノーマルのエアクリーナーに戻し、汚れを掃除してもらい、きちんとしたベースプレートの手配をしてもらって、その日は帰ることになった。
はじめに交換を申し出たときに、新しいエアクリーナーを手配してくれていれば、こんな大惨事に見舞われることはなかったのに…
と思わずにはいられない。
ということで、
エアクリーナーを交換する際には、ブローバイガスの通貨経路が、しっかりと確保できているのか確認したほうがいい。
また、それでも、上手くエンジン内に吸い込まれなかった「ブローバイガス」に含まれるエンジンオイルが、エアフィルターに付着したり、エアクリーナーから漏れて出すことがあるので、そうならないように、定期的にメンテナンス(清掃)したほうがいいだろう。
私も、定期的に、チェックしてみようと思う。
今回の惨事は、エアクリーナーに限らず、何かを自分で交換したり、取り付ける場合は、しっかりと構造を理解してから、作業にあたったほうがいいと実感した出来事だった。
また、作業を頼むのなら、信頼できる人に頼むべきだということも。
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